わたしのきもち

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 早朝の電車はすいていた。座席があいていたので、一応座った。でもすぐ立ち上がった。どうも落ち着かない。彼のことを思えば思うほど、私の挙動は不審になってしまう。  彼はなんと言うだろう。私はきちんと、彼に気持ちを伝えることが出来るだろうか。  羽田空港は少し薄暗かった。まだほとんどの店のシャッターが閉まっていて、空いている窓口も少なかった。大きなスーツケースを持った人達が、搭乗手続きの開始時間を待っている。ベンチはほとんど埋まっていた。  私は朝一番の飛行機に乗る予定だった。時間はちゃんと分かっている癖に、新千歳空港行の飛行機の時間を、電子掲示板で確認する。  飛行機に二時間乗って、そこから彼の家まではバスと電車で三時間。東京と北海道の距離は遠い。  以前一度だけ、彼の実家にお邪魔したことがある。大学時代のサークルの友人達みんなで、スキーをするのだという名目で彼の実家に泊めて貰った。  彼の実家は畑作と酪農をしている大きな農家で、とんでもなく広い土地を持っていた。彼は「東京の土地と価値が全然違うから」と謙遜して笑っていたけれど、見渡す限り彼の実家の土地なのだと思うとただスケールの違いに呆然としてしまった。
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