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心はれやか
クリーニングの引き取りの日の朝。いつもよりすっきりと目覚めた感じがした。例のクリーニング店に行くと、前と同じ店員が奥から出てきた。手渡されたブラウスには、一片の染みもない。きれいになったブラウスをまじまじと見つめていると、店員が声をかけてきた。
「『心はれやかオプション』も対応させていただきました。お客様のお心の『染み』も、抜けたかと存じます」
言われたとおり、恋人との別れを思い返しても、今では穏やかに受け入れられる。が、こうも容易く気持ちが変わってしまったことに、どこか名残惜しさを感じている自分もいる。
一抹の寂しさを胸に抱きながら、私は店員の言葉を肯定するように微笑んだ。
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