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けれど、すぐに光に腕を解かれて、引き離されてしまった。
えっ、もっと抱きしめてて欲しかった。
そう思った直後、目の前に光の顔があった。
あ……
あの時とは違い、次に何が起こるのか理解した私が目を閉じると、そのまましっとりと唇が押し当てられた。
そして、さらにあの時とは違い、そのまま深く重なる。
積年の思いを伝え合うかのように深く深く唇を重ねていると、ゴォォッと強い風が吹き上げた。
え!? あの時と同じ!?
私たちが、驚いて唇を離すと、またあの時と同じように見事な桜吹雪が舞っている。
「綺麗……」
私が呟いた直後、またどこからともなく声が聞こえた。
「一年後、三度ここで」
私は光と顔を見合わせる。
「聞こえた?」
私が尋ねると、光も
「ああ」
とうなずく。
「今度は一年後って言ってたね」
私が言うと、光もうなずく。
「そうだな」
「やっぱり神様なのかな?」
私はまたキョロキョロと辺りを見回す。
けれど、やはりここには私たち以外、誰もいない。
「分からないけど、あの時のあの言葉がなければ、俺たちは今、ここでこうして会ってなかったわけだし」
それを聞いて、私はうんうんとうなずく。
「そうよね。だったら、やっぱり一年後、ここに来なきゃね」
私たちは、一年後に何が起こるのか分からないまま、一年後にここへ来る約束だけをした。
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