2人の未来と神様の声

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どれくらいの時間が経っただろう。 私がぼんやりと思い出に浸って桜を眺めていると、後ろでジャリッと境内に敷き詰められた砂利を踏み締める音がした。 驚いた私が振り返ると、そこにいたのは、スーツにネクタイ姿ですっかり大人になった光だった。 「奈南……」 「光……」 会えるかもしれないと思わなかったわけじゃない。 でも、会えるわけないと淡い期待を打ち消して来た。 なのに、今、目の前に光がいる。 「まさか、会えると思ってなかった」 光が歩み寄りながら呟く。 「私だって……」 私も答えるが、胸に込み上げるものがあって、それ以上は言葉にならない。 「俺、ずっと後悔してた。なんであの時、あんな態度をとったんだろうって。なんで、ちゃんと話を聞いて、奈南を信じてやらなかったんだろうって」 光…… 「私も。なんで、ちゃんと自分の言葉で説明しなかったんだろうって。分かってもらえるまで、話さなかったんだろうって。諦めたら、そこで終わっちゃうのに」 そしたら、今頃、私たちは、あの頃、話してたみたいに幸せな家族になってたかもしれないのに…… 「奈南、もう結婚した?」 まさか、そんなことを聞かれるとは思ってなくて、驚いた私は、首をぶんぶんと横に振った。 「まさか。光は?」 結婚してるの? すると、光は苦笑いをこぼす。 「まさか。あの後、誰と付き合ってもうまくいかなかったよ。どうしても奈南と比べちゃって」 私と? 「こんな時、奈南ならもっと喜ぶのに…とか、こんな時、奈南なら笑って許してくれるのに…とか、つい考えちゃって」 そう……なの? 「奈南、もう遅いかな? 今からじゃ、俺たち、やり直せないかな?」 今から? 光と? ほんとにそれが出来るなら…… 「……やり直したい。私も、ずっと光がいいって思ってた」 私がそう告げると、光は一歩踏み出して、私を抱き寄せた。 「奈南がいる。ここに今、奈南がいる」 光は私をぎゅっと抱きしめながら、頬を私の頭に擦り寄せる。 光の腕の中で、光の胸に頬を寄せると、あの頃と変わらない光の匂いがした。 私は、光の背中をぎゅっと抱きしめる。 もう離したくない。 ずっと光といたい。
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