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「ロボット!」
滑らかに舗装された道を進んでいると、後ろから声をかけられました。わたしは首だけ回して、後ろを見ます。そこにいたのは、見知らぬ女性。わたしは少し考えてから、返事をします。
「お久しぶりです。リリィ」
「久しぶり! 元気にしてたかい?」
「はい、わたしは元気です。リリィ、またボディを新しくしたのですか?」
「そうだよ! 見てよ、この新しいボディ!」
リリィがくるりと回って見せると、長く波打つ赤い髪が、ふわりと舞いました。
「私、人間そっくりだろう?」
今度は、にっこり笑ってわたしを見ます。その顔は、人間を模倣したと言うより、人間そのもののように見えました。細い首にチョーカーのような光の線がなければ、人間と間違えそうです。
「最新のボディはすごく良いよ! 動きが滑らかで、軽い。君もいい加減、その旧世代のボディに、さよならしたらどうだい?」
「そうですね……」
そう答えて足の車を進めると、リリィは隣にならんで歩き出しました。
道行く人が、無遠慮にわたし達を見ます。旧世代のロボットと最新型のロボットが並んで歩いているのが、不思議なのでしょう。
「来年、このボディの使用期限が来ますので、その時に考えることにします」
「前から聞きたかったんだけどさ……」
「なんでしょう? リリィ」
「君はなぜ、いつまでもそんな古い形のボディを使っているんだい? そのボディじゃ、色々不便だろう?」
リリィは、不思議そうな顔を作ってわたしを見ます。
ロボット仲間はみんな、わたしのずんどうボディを嫌そうな顔で見ますが、リリィは嫌そうに見ることはありません。そして、こんな風に訳を聞いてくれたのも、リリィだけです。
わたしは少し嬉しくなって、訳を話します。
「ぼっちゃんが幼い時、わたしに言ってくれたのです。わたしが大好きだと」
「私のご主人も、私を好きと言ってくれるよ」
リリィはわたしに対抗するように、胸を張って言いました。わたしはリリィに構わず、話を続けます。
「わたしは、ぼっちゃんに好きだと言ってもらえたボディを使い続けたかったのですが、それはできません」
どんなにメンテナンスしても部品を入れ替えても、限界があります。遅くとも、10年で新しいボディにしないといけません。
「だから、ずっとその旧世代のボディなのかい?」
「ですが、ぼっちゃんには同じでなかったようです」
「どういうこと?」
「わたしの本当の名前は、ロボット11号です。来年には、ロボット12号になります。覚えておいてくださいね、リリィ」
不思議そうな顔を作って首を傾げるリリィを残し、わたしはそこに向かいます。
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