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(あの女将、男好きだから毛深いのかと思ったが薄毛だったのう。 それがわしの狗茎にヨガって腰を振り振りするもんだから擦り切れて、ほとんど丸出し状態になってしもうたな、へへへッ。それにしてもたったひと晩で女将の身体を全て知り尽くすことになろうとは。わしにそんなに力が残っているはずがない。やはりわしは天狗の力を授けられたのじゃ) 女将の秘淫を何度も突き、擦り付け、精を注入して、夜が明ける頃になってようやく誠治のイチモツは静まった。そいつをパンツの中に収めてから店を出て、勤め先だったあのマンションに向かった。  といっても歩いていける距離ではない。電車で五駅はあるのだ。そのはずが、誠治が気づいたときにはマンションの前に立っていた。それも手にはコンビニの中身のどっさり入った買物カゴが。しかし誠治は深く考えずに、敷地内に足を踏み入れた。  まだ朝早く、住人たちのクルマは車庫に収まっている。ここには一年しかいないがどのクルマが誰のものか、半分ほどは認識していた。 (ふん。今岡のクルマだ。迷惑な野郎だ。おやこれは石島のクルマだ。いつも返事ひとつ返しよらん。それでこれが長野のクルマ。痩せっぽちのチビのくせにこんなデカいクルマ運転しよって。お前らはみな、死ね)  彼はそう念じると、他のクルマ、特に高級車にも何やらブツブツ唱えて回った。  ひと回り車庫を見て回ってから、誠治はようやく玄関に足を向けた。共用玄関ドアのオートロックの暗証番号を打つとドアは左右に大きく開いた。  エントランスの手前、左手に集合郵便受けが並んでおり、その奥に管理人室があった。  ドアには鍵が掛かっていたが、誠治がドアノブを掴んでじっとしていると、ガチャリと錠が外れた。彼は当たり前のようにノブを回して管理人室の電灯を点けた。  窓口のカーテンを開いて長机に買物カゴを置くと、椅子に腰を下ろした。次にカゴから缶コーヒーを取り出しながらリモコンでテレビを点ける。  朝のニュース番組は犯罪にあったコンビニを映していた。 「強盗は無雑作に買物カゴに商品を入れてから、レジの店員をまったく無視して店を出ていったということです」  誠治はぼんやりとニュースを眺めていたが、そこにひとりの住人が管理人室の前を通り過ぎていった。すれ違いざま、ちらりとこちらに目を向けて、管理人のいるのに驚いたようだが、そのまま早足で外に出ていった。 「店員は犯人は高齢の男性だったと証言していますが、カゴを持ったまま空を飛んでいったとも話していますので、その発言の信憑性に疑問が残されています」
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