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一月には年賀状が届いた。
「あけましておめでとう! 今年も健康に過ごしてね!」
二月にはチョコレートが届いた。
「ハッピーバレンタイン! 体にいいようにカカオ多めで苦いかも!」
三月には雛あられが届いた。
「桃の節句おめでとう! 雛あられ食べて健やかに!」
四月にはカラフルな卵が届いた。
「ハッピーイースター! 四月はウキウキするね!」
五月には柏餅が届いた。
「端午の節句おめでとう! 大きくなってね!」
六月にはブーケが届いた。
「ジューンブライド! おめでとう!」
七月には短冊が届いた。
「七夕に願いを! あなたの健康を願います!」
八月には残暑見舞いが届いた。
「夏休みですねおめでとう! 楽しい思い出を作ってね!」
九月には菊の花が届いた。
「重陽の節句おめでとう! 末永く生きてね!」
十月にはジャックオランタンが届いた。
「ハッピーハロウィン! トリックオアトリート!」
十一月には千歳飴が届いた。
「七五三おめでとう! 長生きできるよう千歳飴どうぞ!」
十二月は誕生日なので一番華やかな贈り物が届く。ケーキ、プレゼント、メッセージカード。
どれも、エリカが五歳の時から毎年届く。子供なのにジューンブライドおめでとうが届き十歳を過ぎても千歳飴が届く。
何度引っ越しても翌年から必ず届く。届くと両親は開封もせずに捨てるようになった。エリカが十歳の時、とうとう両親に聞いた。これは一体何なのかと。心当たりがないと言われた。しかし、エリカは続けて聞いた。
「何で警察に言わないの?」
すると両親は相談したけど相手にされなかった、と言った。
嘘だと思った。目が泳ぎ、そわそわし、この話はおしまい、とでも言いたげに話を切り上げたからだ。隠し事をしていると確信に変わった時だった。そして長年疑問なのは、メッセージはやたらと健康にかかわる内容が多い気がした。
健康。そのキーワードに、エリカは自分の部屋でそっと服を捲った。お腹に残った手術痕。生まれつき腎臓が悪く、移植手術を受けた痕だ。手術を受けたのは五歳の時。その後からだ、あの贈り物が来るようになったのは。
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