365日おめでとう

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 知らない、と言っていた両親だったが探偵や専門業者に依頼して送り主を突き止めようとしていることをエリカは知っている。夜になると苛々した様子でまだわからないのか、と電話をしていることがあったからだ。毎年毎年こんなことをされて気にしないという方が無理だ。  十一歳の誕生日の時、どうしても気になって捨てられた贈り物をゴミ収集が来る前にこっそり見に行った事があった。一体どんなものが届いているのだろうかと。  ケーキはとても立派な物だ、チェーン店が作っているようなありきたりなものではない。職人が作った一点物のようにきれいでチョコでできたプレートには「おめでとう」と書かれていた。プレゼントは何故かエリカが欲しかった文房具やおもちゃだ。両親にしか言った事がないのに何故わかったのだろうかと不思議だった。そしてメッセージカードには。 「お誕生日おめでとう、英梨花」  丁寧な字で書かれた祝福の文字。それを見た瞬間涙がこぼれた。少し形が崩れてしまっているケーキを少しだけちぎって食べるととても美味しい。市販の甘すぎるケーキは好きではない。このケーキは甘さ控えめだが果物がさっぱりとしていて、エリカが好きな味だった。心を込めて作られている事がわかる。ケーキはさすがに無理だったがカードはこっそり持ち出し、見つからないように大事に取ってある。 「ちょっと親戚の家に行ってくるから、留守番していて」  ある日そう両親に言われて頷いた。両親が出かけた後、しばらくしてから母に電話をする。 「もしもし、お母さん? あのね、私も一緒に行っていい?」  電話の向こうからは優しい声でもちろん、今迎えに行くからね、と返って来た。エリカは嬉しくてありがとうと言い、出かける支度をする。着替えや勉強道具をリュックにつめて、もちろんあのメッセージカードも忘れずに。
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