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そのうちに、彼は自分には大人すぎて。そしてルカは子供ぽくてオバカさんにしか見えないんだと諦めた。
彼には大人にふさわしいプライベートがあって、ルカはそれを知ることはできないし。そしてルカは相応の同年代カレシが気楽でいいのだと。
でも。その同年代のカレシもまたしっくりしないの繰り返し。
思うような男性に出会えない。
今年もクリスマスはひとり。そう思っていたのに。
手に届かないと思っていた人が、急に手が届きそうなところにいて、でもただの慰労で連れてきてもらっているだけだから、届きそうでやっぱり手に届かないのだろう。
かえって、寂しくなる。
仕事の時とおなじ、仕事以外の話ができない。
シェフがワインを持ってきた。
目も合わせず、ただ黙っている二人を見て苛ついているようだった。
「航太。おまえ、相変わらずだな。見ていて腹が立つ。なんなんだよ、まったく」
気が利かない男だと、友人として諫めているのかとルカは思った。
「おまえが言えないなら、俺が言う」
シェフがそう切り出した途端に、池上さんの顔つきが変わり、初めてルカの正面へと眼差しを向けてくれた。
「ふたりきりにしてくれ」
「わ、わかった」
ルカのグラスにだけワインを注ぐとシェフが下がっていく。今度は心配そうな目を肩越しに残して。
「いきなり、こんな雪深い町に連れてきて悪かった」
「いいえ。近場かと思っていたので驚きましたけれど。こんな素敵なお店に連れてきてくださって、ありがとうございます」
お礼を言うと。またその後、池上さんがうつむいて黙ってしまった。
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