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遠くカウンターでは、シェフと奥様がもどかしそうにこちらを見守っている。
なに。この空気。
ただ同僚を連れてきた雰囲気ではない。
しかも。池上さんが、いつもの無愛想さとはなんか様子が違う。
「三年目なんだ」
「え?」
うつむいたまま、ささやかに聞こえた声にルカは首を傾げた。
今度は彼が顔を上げた。
「気になっているカノジョをこの店に連れてくる。だから、夜遅くなっても俺とカノジョのために料理を作ってくれると、アイツと約束して三年目なんだ」
まだ言っている意味が分からない。
「ミニスカのサンタをしただろ。一昨年に」
「は、はい」
「困っている皆川が可哀想で」
「あ、はい。あれは最悪でした」
「でも。うん、可愛かった」
ん?
なんか。らしくないものが聞こえてきたような……? ルカも固まる。
「なんか、小さな身体でころころ働いている皆川は見ていていいなとは思っていたんだ。だけれど、おまえ、俺よりずっと若いし。もう三十歳になったおじさんみたいな俺なんかより、同世代のいまどきの男の方がいいんだろうなとか。クリスマスもいつも友達と遊んでいたようだから、なんかこう、俺みたいな気の利いた会話のできない男なんかと思って諦めていた」
え!? なにこれ。
ルカは目を丸くした。
あれ。なんか鏡でもみているのかなと。
私と同じような想いを抱いていた人が目の前にいる?
「諦めていたんだけれど。トドメはミニスカサンタ」
「あの、あの。あのミニスカは足が太い私には最悪だったんですけれど――」
彼の力んだ眼差しが、ルカに刺さった。
「いいんだよ、あれで。おまえは。俺、太ももが元気な子が好きなんだよ」
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