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そしてルカも『今年も頼む』のひとことで顔色を変える。
「えー、イヤです! まだあれをやるんですか」
「おう。やるぞ。さあ、こっちへこい」
腕も掴まれ、彼にぐいぐいと店舗奥の小さなスタッフルームへと連れ去られる。
厨房からは、チーフとパートさん達が苦笑いを見せながら『ルカちゃん、頑張れ』と声援を……。
「もうー。去年、知り合いが店の前を通って恥ずかしかったんですから。池上さんだって見ていたでしょう」
「俺だって、恥ずかしいんだからな。社長命令だ。やるぞ」
「えー、また池上さんも一緒なんですかー」
強引に腕を引っ張る彼が振り返る。
「悪かったな。俺で」
眉間にしわを寄せて、上からぐっと睨まれる。ただでさえ強面で恐ろしいのに、さらに恐ろしい男の顔にルカは黙り込む。
そんなに怯えてしまったルカに気がついたのか、ふっと彼の顔がゆるむ。
「あ、悪かった。俺もむかついているんだよ、ほんとにもう」
首もとのネクタイをゆるめながら、彼がスタッフルームのドアを開ける。
地下街の小さな店舗、スタッフがひとまず身支度ができる部屋。
そこに今年もどーんと用意されていた。
営業の池上さんだって不機嫌になるそれが。
彼がそれを指さしてルカに問う。
「今年はどうする。去年は俺がサンタ。皆川がトナカイ」
「どっちもイヤです」
きっぱり言い返すと、また彼が眉間にしわを寄せる。
「やるんだ、今年も、やるんだ。着ぐるみの客寄せサンタ&トナカイを。やるんだ、やるんだ!」
思った。彼もすごくイヤなんだなと。
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