前編 ★ 我慢しろ、社長命令だ。

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 ミニスカのサンタ女の子の格好をさせられた。それがお洒落だと社長は思ったらしい。 そんなにスタイルがいい方ではない。  太っているわけではないけど、細くもないルカは、太もも丸だしでミニスカサンタの衣装を着て店先に出た。  その時の、男性たちの好奇の視線がどれだけ恥ずかしかったか。  そのミニスカサンタの時に『女性軽視、下品』というクレームが来たとかで、ミニスカサンタは廃止され、ルカはホッとした。  それに比べたら、トナカイ着ぐるみなんてずうっとマシ、マシなはず。はずなんだけど――。  何年やらせるつもりなのだろう。  そして自分も。何年もカレシがいないクリスマスを、トナカイの着ぐるみで過ごすのだろう。  今年もトナカイ、じゃない、ピエロみたい。  着ぐるみを着て、いらっしゃいいらっしゃい、クリスマスの素敵なケーキはここだよおー! と、小躍りをして客を呼んでいる。 「ぬいぐるみで客寄せなんて、時代遅れです」 「我慢しろ。社長命令だ」  いつもの平坦で冷めた目に睨まれた。  ルカの隣にいるサンタは、シビアで冷徹なサンタ。 「はい、そうですね」  このサンタは、恋もプレゼントも持ってこない。  ☆*。。。*☆*。。。*☆*。。。*☆*。。。*☆*。。。*☆  やっぱり今年のイブも仕事で散々。  だから速まって、知り合いの知り合いの男性を即席カレシにしてしまった。  一時でもいい。このささくれだったイブの夜を、ひと晩でもいい。一緒にいてくれる人が欲しかっただけ。  でも、そんな自分は最低だった。  25日には味が落ちるケーキのように仕立て、相手の彼の存在を踏みにじっていたのかも。
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