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それから数日後、
“乗ったことのねえ若えヤツ”の代表でもある木下も、いつしかそのレストア作業を手伝うようになっていた。
「へえ、そんな高度成長期からあるのに、コイツ、電気で動いてたんですね」
「おう、そうさ。こいつが電気自動車のハシリってわけよ。
それだけじゃねえぞ。
ステアリングも、軽い力で回るよう“パワステ”も付いてるし、なんたってこんな昔から衝突時の衝撃を軽減する仕組みまであるんだからな」
「未来を先取りしてたってわけですね」
山本の解説に、木下も目を輝かせて頷く。
「さて、これでバッテリーさえ交換すれば、理論上は動くはずだ」
「流石にコイツのバッテリー自体は使えないので、新品にするしかないですね」
昔と違ってバッテリーそのものは小型化しているため、木下が持ってきた新しいバッテリーと付け替えると、そのスペースに空洞ができてしまった。
木下が残念そうに呟くと、それを聞いた山本が豪快に笑った。
「木下、大丈夫だ。どうせバッテリーのとこなんか、“黒と白のボディ”を被せたら、隠れて見えやしねえんだからさ」
「それもそうですね」
木下もつられて笑った。
二人の笑い声が整備場の屋根に反響する。
もう日が落ちて、薄暗くなり始めていた。
「よし、動かしてみっか」
山本がマシンに向かいながらポツリと呟き、それを聞いた木下は、ゴクリと唾を飲み込むと、ひと呼吸おいて山本に向き直った。
「ヤマさん。ここはヤマさんが運転席に乗ってください」
それを聞いた山本は、シワくちゃの顔をいっそうシワだらけにして、目尻を拭った。
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