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「アドニエル・ソシエル公爵令息の婚約者をしております、アテナ・エルシエルにございます」 彼女の爵位は伯爵令嬢だ。 そんな女に、何故か兄様である、ソシエルが優しく微笑んでいた。 ……これがどういう事なのか、私にはよく分からない。 って言うより、多分わかりたくも無い。 兄様の傍にあの女がいるだけで…… 『キモチワルカッタ』 そんな言葉が心の中で鳴り響くのを、私は知っている。 この夏、あの方は婚約したとかで、それはとてもめでたい事だろう。 でも……だからどうしたというのだろう。 『キライナラウバエバイイ』 私の中の悪魔が私にそう語り掛ける。 奪え、殺せ、貶めろ、自分を裏切った兄を結婚なんて させてたまるか……。 うるさい、ウルサイ、ウルさい!!!! 心の中のざわめきに支配されて行く。 気付いたら、私は泣きながら笑っていた。 分かっていた、兄を愛していても、報われない事を……。 なら、壊してしまえばいいと思ってしまうのでした。 「あの、アテナさん、お兄様が図書室でお呼びです」 そう言えばにこやかな笑みを浮かべてついてきてくれる。 『馬鹿な女』 私は心の中でそう思っていた。 何しろ、この女は兄に対して恋慕の情を抱いていないからだ。 まあ、それはそれで都合が良いけどね。 そして……兄が居る部屋へと入ると、いきなり兄が抱き着いて来た。 その瞬間に理解する。 ああ、コレが女の体なんだなって。 今までも兄とは仲の良い兄弟だった。 でも、最近はそれだけじゃない。 まるで恋人同士のように抱き合って、舌を絡ませ合うディープキスをしていた。 ……その日はそれから何も考えられなかった。 ただただ自分の中に浮かび上がる欲望のままに行動するだけ……。 その夜から……兄が寝た後を狙って、兄の体を弄る日々が続いた。 もう、男として使い物にならなくなるまで徹底的に。 おかげで兄は私だけのモノと成るのでした。 「アテナ、嫌い、ルアがいい」 ルア、ルア……あの日以来私は兄に呼ばれる。 アテナの傍にいても兄は私を呼ぶ。 アテナとのデートの時もだ。 「いい加減にしてください、ソシエル様、その女は妹ですよ」 「アテナ嫌い、ルアが良い」 「このっ!」 アテナは僕の言葉を聞いて、思いっきり僕の頬を叩いた。 その勢いで僕は地面に倒れこむ。 その時の衝撃で口の中が切れたのか血の味が広がる。 それを見てか、周りにいた騎士たちが僕を取り囲んだ。 ああ、またこうなるんだな……。 どうして、僕はこんなにも嫌われているんだろう? そんな事を考えて、ふと思った。 …………あれ?なんで、皆は僕がこんな目に遭っているのを知っているんだ? ……僕は誰からも知らせていない。 そもそも、そんな相手はいないはずなのに、アテナを見れば何かを叫んでいる。 何を言っているのかな? でも……彼女は何故、アテナの事を知っていて? 「兄様を叩くなんて婚約者として恥ずかしくないのですか?」 「貴方に何か言われる筋合いはないわよ、この、雌豚」 「何ですって」 そう取っ組み合いと言うか殴り合っている壮絶な女のバトルとかしている。
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