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3.
正直言って……アテナがここまで喧嘩っぱやいと思わなかった。
妹も応戦しているが多分強いのはアテナだろう。
妹は僕をかばって立っていた。
しかし、その腕にはあざができていて痛々しい。
それでも、妹はアテナを睨んでいた。
……やっぱりおかしい。
妹の様子が、あの夏の日からおかしかったのだ。
それに、あの時あの女は確かに兄と呼んできた。
兄様、ではなく、お兄様……だと。
一体何があったのだろうか? 分からない事だらけだ。
でも、これだけは分かる。
あの女は敵だ。
兄様を奪おうとする女。
許さない……絶対に、絶対に……! 私は心の中で黒い炎を燃やしていた。
兄様は私を改めて見つめていた。
「兄様、今この女をお屋敷から追い出しますから、安心してください」
私はそう言い、アテナを無理やり引きずって連れ出していく。
その様子を見て、兄は悲しそうな顔をしていた。
だから、私は心の中で叫ぶ。
―――愛しています。兄様。
だから、ずっと一緒にいましょうね。
兄をあんな風にした、あの女の事も……消し去ってやりました。
ああ、兄は本当に可愛い人。
これからも、ずっと一緒ですよ。
私が、一生守ってあげます。
さあ、今日も楽しい日々の始まりです。
そう思って居たら今度は私に婚約者が出来た。
「ルア、お前にも婚約者が」
兄様は絶賛複雑な気持ちらしい。
まあ、仕方がない。
私も、婚約したなんて言われても全然実感がわかないのだから。
「兄様安心してください、私は兄様から離れませんから」
そう言えば、兄様は嬉しそうに微笑んでくれた。
良かった、これで少しは兄様に恩返しができた気がする。
そんな兄様を、私は大好きだからこそ悲しませたくはない。
「すみません、ジェル王子、婚約はしません」
「お前が兄を好いているのは知っているが、それは恋では無い」
何故そんな事を言うのか?
だって、好きな物は好きでしょうに……。
そう思いルアはジェル王子を蹴飛ばし始めた。
狂った様に蹴飛ばし続けた。
「兄様と私の仲を裂こうというの、アンタそれでも王子な訳」
そう言ったら、急にジェル王子が笑い出した。
それは、不気味な笑みだった。
そして、私の足を掴む。
そのまま力任せに振り回し、壁に叩きつけられた。
全身の骨が砕ける音がする。
そして……気が付いたら私は床に転げ落ちていた。
痛みで頭がクラクラとする。……一体、何が起こったんだろう? そう思って周りを見渡す。
すると、周りの人達は唖然とした表情で私を見ていた。
え? 何で皆んな、そんな顔してるんですか……!?︎ 私は……ただ、お兄様と一緒にいたかっただけなのに……。
そう思った瞬間に……ある事に気づく。
これは……チャンスなのでは
「王子に殺されるぅゥゥゥぅ」
気付けばそう叫んでいた。
兵士達が集まり出し私を羽交い絞めにして行く。
「放して、王子はあっちよ」
私はそう言うが、誰も聞いてくれない。
それどころか、何処かに連れて行かれそうになる。
私は暴れて抵抗するが、兵士の方が強くてズルズルと引きづられていく。
何でこんな事になってるの、お兄様はどこに……。
そんな事を思っていたら、目の前に兄がいた。
兄は必死な様子で走り去っていく。
私は……追いかけようとしたけど、兵士が邪魔で行けない。
私は裸にされてそのまま民衆の前に差し出された。
「なんで、」
王子の冷たい声が飛ぶ……。
「こいつは俺の婚約者なのに、婚約したくないと言い張った、皆のモノ、その様な横暴を許すのか」
わぁーーーっと歓声が上がる。
「ならばこの女はどうするべきだ」
その言葉に国民が声を合わせて叫ぶのです。
「犯せ、そんな女はやっちまえ」
その声に鳴りやまない歓声に足踏みに私は絶句する。
嫌がる私を民衆の中に王子は突き落とす。
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