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脳室穿破
「これは、いったいどういう…」
目の前に映し出されているMRI画像を見ながら、脳外科医の増田堅一は唸った。
素人が見ても分かる。まともな脳ではない。中心線が湾曲し、中央にある脳室は破れ、血が流れ出ている。
脳室穿破。
脳の奥底にある視床の血管が破れ、溢れ出した血液が行き場を失くし脳室の壁を突き破って、侵出している状態。
損失部位は脳の奥にあるため、手術は不可能。止血剤を点滴で注入し、ひとまず出血を止める。
出血部分は握りこぶし程度の大きさがある。かなりの出血量だ。
しかもこの患者。出血の後に梗塞も起こしている。血管が攣縮して、血液の流れが滞ったのだ。血管攣縮による出血性梗塞。
間違いなく障碍が残る。それもかなり重度の。歩くなんてとんでもない。下手すると、意識すら戻らないかもしれない。
増田はMRI画像を凝視しながら、ひとつ息を吐いた。できることは、もうなかった。
だが、患者は裏切った。
もちろん、逆の意味で。
患者は何の障碍もなく、すっきりと目を覚ましていた。
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