5人が本棚に入れています
本棚に追加
友達が国家資格に合格した。ここ最近遊ぶ時間を削って勉強して合格したのだから何かお祝いをしたいなと思った。いつもつるむ悪友と一緒に何かお祝いでもしようと相談する。
「飲み会はやるにしてもさ。何かプレゼントとかあっても良くね」
「そうだなあ。物っつってもアイツ物欲ないし、好き嫌い激しいしなんだろうな」
ものっすごい偏食でいつも飲み食いするものが同じなので、いっそそれを一か月分とかやろうかなと思ったけど友人がふと思いついたように言った。
「あ、アレは? おめでとう、を縦書きにしてメッセージとか」
「あいうえお作文か、いいなそれ」
実際紙に書きだしてみる。しかしその五文字を見て俺たちは固まった。
「いやこれ、難易度高くないか」
「お、はいいとして。で、から始まる言葉ある?」
真剣に二人で考える。今回取った資格にちなんだ言葉とか考えようかと思ったけど全然結びつかない。これはもう普通の文章でいいかという事になったがそれを考えるのも一苦労だ。
「お。おー。俺たちからお手紙でーす」
「俺たちって。しかもメッセージカードにお手紙って書くわけ」
「いいじゃん、出だしっぽくて」
言いながらすでに油性ペンで書き始めている。おい、勇者か。
「他の言葉考えてないのによく書けるな」
「こういうのはノリと勢いだよ。ウメェ棒100本はちゃんとやるんだしいいじゃん、おふざけがあっても」
あとは「め」「で」「と」「う」。この言葉から始まる文章を考えなければいけないわけだが。
「め、め、め……なんかあるかな」
「目指せ、とか」
「いいな。目指せ……いや合格してるじゃん、何目指すの」
友人の言葉に俺も考える。次の目標とか、なんかでかい事とか書いとくか。
「じゃあ、めざせ富士山登頂 急げ、っと」
「いや何でだよ。お前この後の文章どうやってつなげるんだよ」
俺も友人のようにすでに油性ペンで書いている。ノリと勢いだこういうのは。
「一富士二鷹三茄子っていうし、富士山はなんとなく言葉だけでもめでたいだろ」
「お前富嶽百景読んだ? そこそこに富士山ディスってんぞ太宰治」
「いいんだよ、月見草一つでコロっと良い山だって意見変えてるんだからあのおっさん、本気じゃねえよ」
「知り合いみたいに言うなよ」
お手紙です、富士山登頂目指しましょう。なんだこのメッセージ、今更だけど。
「で、って難易度高くね。で、だと出る、みたいな漢字で始まる言葉が多い気がする」
「俺らの語彙力が試されるな」
最初のコメントを投稿しよう!