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「つん、と尖がりすぎてるのよね。もう少しだけ低い方がいいのになぁ」 「へぇ、鼻なら高くしたい人が多いと思われますが、司さんは低くしたいのですね? なかなか贅沢な悩みではないですか?」 「もう少しだけ低くしたい、そう思い続けて十余年」 「つまり、初めてそう思ったのが30代の半ばだったということですね?」 「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ちゃちゃちゃちゃうわぁぁぁぁぁぁ!!! 読者の皆さんが間違った計算しちゃうでしょうが!!」 「あれ? 間違ってる?」 「ぜーんぜん間違っとるわよ! もーやめてくれたまえよね、左くん!」 「……では、まあ、そういうことにしておきましょうか……。  司さんの話を聞いて、私、クレオパトラのことが脳裏に浮かびましたよ」 「え? どうしてどうして? あ、わかった♡ 美女という共通点がありますものね、わたしとクレオパトラには♡」 「(スルー)クレオパトラの鼻について、フランスの哲学者パスカルが書いた有名な言葉があります。  “クレオパトラの鼻がもう少し低かったら世界の歴史は変わっただろう”……司さん、聞いたことありますか?」 「へー、初めて聞きました。どういうこと?」 「クレオパトラは、日ごろから美容に気を付けていた女性だったようですね。また、数カ国語を話せる頭の良さと、政治的な戦略を練って実行する点でも秀でていたと言われています。  そして、その戦略におけるターゲットとなる男性たちを言いくるめるのに、彼女は自分の美貌を武器として用いたのではないかと言われています。目鼻立ち整ったそのお顔が魅力的で絶妙のバランスだったということです。  ですから、もう少しだけそのバランスが狂っていたら、美貌は武器にはならなかったはずだと、歴史は変わっていただろうと、そうパスカルは言いたかったのですよ」 「まあ、クレオパちゃんって、才色兼備のわたしと似てい ――」 「ません!!」 「わたしが最後まで言うのを全力で阻止しましたね?」
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