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「この辺りで草凪さんっていう人がやっている喫茶店を知りませんか?」
悪い予感がした。
こんな美人が草凪さんの喫茶店を訪ねに来たなんて。
「えっと、草凪さんの喫茶店、ですか?」
「30歳くらいの男性がやっているお店なんですけど、ご存じないですか?迷ってしまって」
「えっと……知ってます、けど。案内しましょうか?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
つい、親切心からそう口走ってしまったけれど。
嫌な予感はますます大きくなるばかり。
喫茶店には10分もかからないところにあるというのに、その間が苦痛で仕方がなかった。
「あの、草凪さんのお知り合いですか?」
「ええ。実はお付き合いしていて。遠距離なんですけど、彼をびっくりさせようと思って、内緒で来たんです」
「あ……草凪さんとお付き合いされてる方……」
嫌な予感は的中するし、美子の言っていたことが現実のものになってしまった。
彼女はわたしと正反対の女性だった。
落ち着いていて品がある大人の女性という感じで。
告白する前に振られたも同然だった。
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