第1章

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「まったく、女が一人で泣きながら夜道歩いてんなよ」 どこかで聞いたことがある声が聞こえると思ったら、目の前にあの真淵が立っていたのだ。 「なんで真淵がここに?ひっく」 「俺も今帰るところなんだよ。そしたら佐原が泣きながら歩いてるの見かけたから。また失恋でもしたのか?」 「うるさいなあ!放っておいてよ」 「図星か。何度失恋したら気が済むんだよ、お前は」 「真淵に関係ないでしょ!いいから、もう放っておいてー、ふぇ~ん」 失恋して落ち込んだときは、なぜか真淵がいつもそばにいて。 何度も泣き顔を見られている。 もうこれ以上醜態をさらしたくないのに、我慢しようとすればするほど涙は止まらなくて。 そんなわたしに困り顔を見せると、真淵は手を引いて歩き始めた。 「いいから、帰るぞ」 「放っておいてって行ったのに~」 「放っておいてって言ってもな。どうせ帰る場所同じじゃん」 「誤解される言い方しないで~。えぇ~んっ、同じマンションに住んでるだけでしょ」 「はいはい。怒るか泣くかどっちかにしろよ。忙しい奴だな、ほんと」
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