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「まったく、女が一人で泣きながら夜道歩いてんなよ」
どこかで聞いたことがある声が聞こえると思ったら、目の前にあの真淵が立っていたのだ。
「なんで真淵がここに?ひっく」
「俺も今帰るところなんだよ。そしたら佐原が泣きながら歩いてるの見かけたから。また失恋でもしたのか?」
「うるさいなあ!放っておいてよ」
「図星か。何度失恋したら気が済むんだよ、お前は」
「真淵に関係ないでしょ!いいから、もう放っておいてー、ふぇ~ん」
失恋して落ち込んだときは、なぜか真淵がいつもそばにいて。
何度も泣き顔を見られている。
もうこれ以上醜態をさらしたくないのに、我慢しようとすればするほど涙は止まらなくて。
そんなわたしに困り顔を見せると、真淵は手を引いて歩き始めた。
「いいから、帰るぞ」
「放っておいてって行ったのに~」
「放っておいてって言ってもな。どうせ帰る場所同じじゃん」
「誤解される言い方しないで~。えぇ~んっ、同じマンションに住んでるだけでしょ」
「はいはい。怒るか泣くかどっちかにしろよ。忙しい奴だな、ほんと」
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