第1章

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真淵はただの同僚というだけでなく、同じマンション、しかも隣の部屋に住んでいるのだ。 最初はお互いに全然気づかなかったのだけれど、入社して3か月後に初めて玄関先で顔を合わせたときにお隣さんだということが発覚。 それが大きな原因なのだろうけれど、失恋した後の泣き顔をさらすことが多いのだ。 「わたし、コンビに行くから手離して」 「コンビニ?何か買うのか?」 「お酒」 「なんだやけ酒か。仕方ないな、付き合ってやる」 付き合ってほしいなんて一言も言ってないのに。 コンビニまでついてきて、しかもなぜか自分の分のお酒まで買ったのだ。 「ねえ、もしかして一緒に飲むつもり?」 「だからさっき、付き合ってやるって言ったじゃん」 わたしはてっきりコンビニに付き合ってくれるという意味だと思ったのだけれど。 いつの間にか止まっていた涙は、頬で乾いていた。 「俺の家で飲もうぜ。いくらでも話聞いてやるよ。今日だけ特別だからな」 「……別に頼んでない」 「ったく、かわいくねーな。だから、彼氏できないんだよ」
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