第1章

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わたしの声は聞こえていたはずなのに、美子にそう告げると彼はさっさと事務室を出て行ってしまった。 あの告白をしてから、明らかに彼に仕事でも避けられている。 またわたしに付きまとわれるとでも思っているのだろうか。 仕事の時は真面目にしていたし、アピールも仕事終わってからだったし。 わたしのことちゃんと見てもらえてなかったんだなあと思うと悲しい。 「あー……」 「もう諦めたら?向こうがああいう状態じゃ無理でしょ」 「うん……」 もう他に好きな人がいるし、ただの仕事仲間に戻りたかっただけなのだけれど。 やっぱり1度恋愛が絡むと仕事に影響が出てしまうんだなあ。 北川さんに恋をしたことでまた一つ勉強になることがあった。 「職場の人には恋愛感情を抱かない」ということだ。 「お疲れさまでした。お先に失礼します」 美子と同時に定時で上がる。 うちの会社はほとんど残業しなくてもよくて、給料にも不満はない。 なかなかの好条件で、退職者が少ないのも理由がわかる。 仕事はとても充実しているのだけれど……
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