1章. 継続する凶行

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〜東京世田谷区〜 床暖房の効いた広い部屋に、頭に包帯を巻いた女性が横たわっていた。 「…ったく、夜は1人で外に出ちゃダメだって言っただろうが。おまけに、お土産まで持ち帰りになったし」 「ごめんない。でも私には止められなくて」 その会話に、ふと意識が戻った。 「痛ッ!」 起き上がろうとして、頭に痛みが走る。 「あ、気が付いたみたい」 女性が来て、肩に手を当てる。 「慌てないで大丈夫、頭をぶつけた様で、少し傷になってたけど、手当てはしたから」 彼女の手を借りて上体を起こし、床に座る。 「ここは…どこ?あなたは…誰?」 状況が理解できず、それだけではなく、何も思い出せないことに気付いた。 「私は…誰?そんな…何も思い出せない」 何も見えず、両手は後ろで拘束されている。 動かすとガチャガチャと金属音がした。 「手錠?目隠し?どうしてそんな!」 「落ち着いて。本当に何も覚えてないの?」 「…何も覚えてない」 焦りが不安に変わる。 「頭を打ったせいじゃないか?」 彼の声に振り向く彼女。 その顔に負けた彼。 「千尋(ちひろ)、ほらよ。大丈夫だろう」 投げられた鍵を受け取る。 「ごめんなさい。あなたは頭から血を流して、道に倒れてたの。大した傷ではなかったから、ここに運んで手当てして、念の為に…ね💦。ごめんなさい、今外すから」 千尋が手錠を外し、ゆっくり目隠しも取る。 心配気に首を傾げ、顔を見つめる。 「では、あなた達が助けてくれたの?」 「まぁ…そうなるかな」 そばに彼もやって来た。 「彼は瑞樹(みずき)、彼の車で運んだのよ」 「大丈夫そうだな。朝食の用意は出来てるから、2人で食べてな。僕は仕事に行くから」 「あ、ありがとう…ございます。何か分からないけど、助けてもらって」 「気にしないで、一晩中うなされてたよ。悪い夢でも見てたのね。安全な人だと分かっていたら、ベッドに運んだんだけど…」 床の枕と、掛けられていた柔らかな毛布。 2人が優しい人だと言うことは分かった。 「瑞樹、行ってらっしゃい。今日は会社休んで、彼女と一緒にいるわ」 「それがいい。必要なら、マリアに伝えて、医者を呼んでもらってくれ。部屋も用意させるから、客間のベッドで休んでいた方がいいよ。じゃあ」 ドアを閉めて出て行く。 「さて、立てるかな?」 「はい、大丈夫だと思います。あ、そうだ」 立ち上がりながら、ポケットを探る。 「ごめん。私たちも、身元が分かるものを探したんだけど、何も無かったわ。盗まれた様ね」 「そうですか…」 落胆する彼女。 「そうね、え〜と…ミカにしよっか。名前ないと不便だから」 「ミカ…ですか。…はい、分かりました。お世話になります、痛ッ!」 「ほらほら、頭なんて下げなくていいから。朝ご飯にしましょ」 釈然としないながらも、今は優しさに甘えるしかないと思うミカであった。
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