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終章. 運命の終止符
広い敷地の中央に建つ、大きな3階建の邸宅。
その1階にある、豪勢な応接間に紗夜はいた。
中国情緒に包まれた部屋には、中央に大きな大理石の円卓があり、ゆったりしたDURESTAの高級ソファーチェアーが囲んでいる。
「飲み物は何がよろしいかな?」
「お構いなく。それより目的は何なの?」
「困ったものだ。記憶をなくしても、刑事は刑事ってことですか。尋問できる立場じゃないでしょう」
(全く油断がない…私の能力を知ってる?)
そこへ手下が入って来て、耳打ちした。
「何?どういうことだ…まぁいい、通せ」
(初めて動揺した…誰?)
邸宅の門が開く。
「さて、行くか」
と、踏み出す前に、空を見上げる。
(ない…よな。トラウマか?)
「どうした?びびってんのか?」
「バカ言え、何でもねぇよ」
玄関に向かいながら、シッカリ屋上に、ヘリが一機あることを確認した。
中へ入ると、応接間に案内される2人。
「またお越しとは驚きましたよ、飛鳥組長」
「生きてた様だな、謝皓然」
(謝皓然って、新龍会❗️)
「さ、紗夜❗️」
驚いた淳一が駆け寄る。
「紗夜、俺だ淳一だ、分かるか?大丈夫か?」
「ちょっと、あの時の刑事ね!触らないで!」
席を立って逃げる紗夜。
「可哀想に、感動のご対面とは行きませんか」
「会長、彼が来ました」
「さて、こちらのゲストはどうかな?」
護衛2人を連れて、入って来た。
「か、風井英正❗️」
泣きそうだった淳一が、一転して睨みつける。
「ほう、記憶を失ったという噂は、どうやら本当の様だな、紗夜刑事」
「………」
「つまらん。私はずっとお前に、復讐する機会を待ち続けてたというのに、忘れたとはな」
「誰だか知らないけど残念ね〜お爺さん。復讐されてる感は全くないわ。もしかして刑事の私に、大事な息子でも殺されたとか?」
「クッ、ふざけるな❗️」
「あら、図星かしら?それはお可哀想に〜」
「うるさい、黙れ❗️紗夜、もうお前は終わりだ。連続殺人の凶悪犯として、死刑にしてやる」
「何だと❗️痛っ⁉️」
紗夜が、ヒールの踵で淳一の足を踏みつけた。
「死刑に?どうやって?証拠は?」
「証拠は鑑識が提出した髪の毛だよ。全ての死体に、お前の髪の毛があって、お前が現場に1番にいたことは明確だ。その後、行方をくらまし、逃走したことで尚更疑いは確実になった」
「髪の毛?引き抜かない限り、毛髪でのDNA鑑定は無理じゃないの?」
「バカめ、私の力を甘く見るな。毛髪の鑑定は、専門施設へ依頼しないとできん。本間の屋敷から採取した沢山の毛髪を、入れ替えるくらい簡単なことよ」
「思い出したぜ、あんたあの警視総監だった古狸だな?」
神が毒付く。
「そうなんだぁ。通りで偉そうなこと。しかし、それなら分かるんじゃないかしら?私が記憶喪失で、精神異常鑑定になれば、死刑にはできないって」
「フっ、そんなもの、私の時の様に、どうにでもできる。死刑判決もな❗️」
「あの本間瑞樹に付いた、野々宮って弁護士か?富士本部長が、お前の弁護もしたと言ってたが…」
「ほう、分かってれば話は早い。彼は旧友でな、私の言いなりだ。どうだ、足掻いても無駄と分かっただろう」
「ひでぇな警察ってのは、腐りきってやがる」
「飛鳥組の組長か、共犯にして潰してやるか。謝皓然、ご苦労だった。彼女はいただくよ。謝礼は…」
「謝礼は必要ありません。紗夜刑事を渡す訳にはいかなくなりましたので」
「何?」
「ですよね?ラブさん」
「その通り。ご協力ありがとね〜」
応接間の片隅。
高級パーテーションの裏で、ラブは座って全てを聞いていた。
「紗夜さん、もうそれぐらいでいいわよ。上出来、バッチリ録画しましたから」
「疲れたわ、ごめんね淳」
「痛かったけどな」
足を踏まれた時点で分かっていた淳一。
紗夜とラブは、部屋に入った時から、心で会話していた。
ラブからの挑発して!の声に従って、風井に全てを喋らせたのである。
「クッ…貴様ら❗️」
「わざわざ警察の方を沢山連れてきてくれて助かるわ。風井英正、偽証強要、本間直忠殺害首謀、並びに法廷侮辱罪、連続爆破殺人首謀の容疑で逮捕❗️」
ラブの声と共に、風井が連れてきた警察官たちが一斉になだれ込み、喚く老人を連れて出して行った。
「謝皓然、お前は奴の仲間じゃなかったのか?」
「何のことでしょうか?ハハ、ラブさんから電話を頂きましてね。ラブさんに頼まれちゃ、断れないでしょう。それに、飛鳥組には、つい先日命を助けて貰いましたから。これで、貸し借りなしってことで」
「全く、さすがだな、ラブ」
「仲良くやってよね、お二人さん💕」
「ラブさん、千尋さんが心配です」
「そうね、行きましょうか。淳一さん、紗夜さん借りますね〜」
「出て左のエレベーターが、早いですよ」
「我会帮你〜」
掛けてく2人を唖然と見送る、組長、会長、刑事の3人であった。
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