Epilogue.

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〜東京都医科大学病院〜 その中に、特別な精神科病棟があった。 重大犯罪の末に、精神異常と判定された者の多くが、改善するまでの期間、厳重な監視体制の(もと)、ここで療養するのである。 監視室のブザーが鳴り、食堂のランプが点く。 「また辻本さんね、行ってくるわ」 モニターを見て、佐々木が出て行く。 監視員は全員、医師免許を持つ警察官である。 食堂に着くと、騒ぎは既に収まっていた。 「辻本さん、ほらここだよね〜。安心して、一緒に食べましょ。木島さんごめんね、席代わって貰っちゃって」 「いいのよ千尋さん。私はどこでもいいから」 佐々木が看護師に状況を尋ねる。 「辻本さんは、あの席じゃないと混乱するのよ。しかし、あの娘…あ、男だったわね。とにかく優しいわね」 「千尋さんか。肋骨(ろっこつ)が折れてて、片腕も酷い状態なのに、笑顔でいるのは、逆に少し不気味だけどね」 コルセットを身につけ、片腕を吊った状態の菊水千尋。 「でも千尋さんが来てくれて、正直助かってるわ。皆んなに優しいし、彼の言うことなら、何故かみんなちゃんと聞くのよね。私達にまで気を遣ってくれるし」 「あれが、あの残忍な連続殺人犯とは、とても思えないわね」 その時、テレビからニュースが流れた。 「この年末、都内を騒がせた2つの事件について続報です。容疑者として指名手配されていた、刑事の宮本紗夜さんですが、事件の首謀者である元警視総監の風井英正が、偽装工作したものであったことが明らかになり、事件は無事に終結を迎えたとのことです。警察は…」 佐々木が急いで番組を切り変えた。 気になって千尋の様子を伺う。 何も気にしてない様子で、笑顔で食事を続けている千尋。 「ニュース番組は、配信しない様にならないかしらね」 呟いて、管理室へ戻っていく。 看護師達も仕事に戻る。 何かを感じて、辻本が固まる。 (無事に…終結?) 体の中に、阿修羅を感じる千尋。 冷ややかな目で、ニヤリと笑んだ。 (さ・や…) 〜 Flashback 〜    心譜
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