インスタのあなたに恋をしました

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「インスタのあなたに恋をしました」 *インスタのあなたとの出会い* 「うわぁ~、今日の空、綺麗~!雲一つない空だ!」 そう呟きながら、青く澄んだ空を写真に収める。 「インスタにあげようっと!」 そしてすぐに撮った写真をインスタにあげる。私のインスタには、青く澄んだ空や、淀んだ空、オレンジ色に染まった空など、とにかく空の写真で埋め尽くされている。誰かに見てもらいたくてインスタを利用しているのではなく、ただ自分の思い出として、コレクションとしてインスタを利用している。インスタを利用し始めて、一年が経った。最近は、私以外にも空の写真をインスタにあげている人の投稿を見るのも、私の日常になっている。 「今日も、誰か良い空の写真あげてないかな~」 いつものように、探していると、一つの投稿に出会った。 「何これ!青空の写真だけど、写真じゃないみたい!」 そこには、今にも吸い込まれそうな濁り一つない、絵の具で青く塗りつぶしたような空の写真があった。私はこの写真に恋をした。 「流れると書いて、りゅうさん?っていうのかな?すごいな!」 流のインスタには、空の写真の他にも、料理の写真や、花の写真などたくさん投稿されていた。ただ、流が映っているものは一つもなかった。それから私は、毎日、流のインスタを覗いては、いいねを押す日々を過ごしていた。流が撮る空の写真は、どれもCG加工されたように美しく、その写真を見ている間は、嫌なことなど忘れられた。 私は、今大学三年生だ。大学に入学する前は、華の大学生活を夢見ていた。しかし、現実は違った。大学の中にもカーストは存在していて、私はいつも底辺にいた。だから、カースト上位の人から雑用係をさせられることなんか、日常茶飯事だった。正直、辛くて苦しくて、何度大学を辞めようと思ったことか・・・でも、流のインスタに出会ってから、そんな辛く苦しい日々が、少しずつ明るくなっていった。すると、ある日、私が投稿した青空の写真にいいねが付いていた。 「うわっ!いいねが付いている!」 インスタを始めてから一年。私にとって初めてのいいねだった。 「誰がいいねを押してくれたんだろう?って!流さん?」 心臓が飛び出るかと思った。ものすごく、嬉しくてたまらなかった。それから、私が空の写真を投稿すると必ず、流からいいねが付くようになった。流からコメントが来ることもあった。私も、流の投稿にコメントを送信したりした。そして、思い切って流にダイレクトメールを送ってみた。 「初めまして。水上瑠衣です。いつも私の写真にいいねやコメントを送ってくれて、ありがとうございます。良かったら、連絡先交換しませんか?流さんと、もっと空の写真の話がしたいです。返事待ってます」 このメッセージと共に、ラインIDを添付した。 「ちょっと、責めすぎたかな?返信来なかったらどうしよ・・・」 そう一人で盛り上がっていると、インスタの通知が鳴った。 「初めまして。流です。僕も、水上さんと空の写真の話がしたいと思っていました。こちらこそ、よろしくお願いします」 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!夢みたい!嬉しすぎて、おかしくなりそうだよ~!」 すぐに、ライン登録をした。 「流さんは、どんなお仕事をされているんですか?」 「僕、高校生なんです。水上さんは?」 「高校生なんですね!私は今、大学生なんです」 「水上さんは、どんな空が好きですか?」 「青空が好きです!でも、曇り空とかも好きです。流さんは?」 「僕も青空が好きなんです。一見、青空に見える空も、それぞれ違うんです。青色が濃い時もあれば、淡い時もある。それが好きなんです」 「そうなんですね!」 こうして、私と流さんのやり取りが始まった。時には、お互いの今日の出来事を報告し合ったり、またある時は、愚痴を言い合ったり。そんな日々が私には幸せだった。流のインスタに出会ってから、私の日々は明るくなり、自分でもわかるくらい笑顔が増えた。 *初めての経験* いつものように、大学で講義を受けていると、色んな人から、声をかけられることが多くなった。するとある日、大学に行き講義を受け、講義室から出ようとすると、ある人に呼び止められた。 「瑠衣、俺と付き合ってくれないか。絶対に、瑠衣のこと幸せにする」 といきなり、クラス内で一番のイケメンの早乙女唯斗から告白された。 「私、早乙女君と話したことあんまりないけど・・・」 「実は前から瑠衣のこと、好きだったんだ。いつ告白しようかとずっとタイミングを見計らっていた。そしたら、周りの男が瑠衣のことを狙っていることに気づいて、誰にも渡したくないって思ったんだ。俺は、瑠衣が欲しい」 「そう思ってくれるのは、すごく嬉しい。けど、今すぐに返事はできないけど・・・もう少し、待ってもらっても良い?」 「全然良いよ。瑠衣のタイミングで、返事をしてくれたら良いから」 家に帰るまでの道中、早乙女君と付き合うかどうかを考えていた。正直、私が早乙女君と付き合うことができるなんて夢にも思っていなかった。生意気かもしれないが、以前少しばかり、早乙女君に恋心を抱いていた。でも、今は流のことが好きだ。だけど、流はインスタの中にいる人だ。悩みに悩んだ挙句、私は早乙女君と付き合うことにした。 「明日、早乙女君に返事を伝えよう」 翌日、大学の講義終了後、早乙女君を呼び出した。 「早乙女君、昨日の返事なんだけど・・・」 「おう」 「わたしで良ければ・・・よろしくお願いします」 「まじで?うわぁ~めっちゃ嬉しい!昨日の感じだったらだめだと思ってた。今から俺たち彼氏、彼女になるんだな~」 そう言って、ラインを交換した。子供のように喜ぶ早乙女君がどこか、可愛らしかった。それから家に帰り、スマホを開くと、早乙女君から連絡が来ていた。 「瑠衣、本当に俺の告白をオーケーしてくれてありがとう。絶対に幸せにして見せるから。愛しているよ」 「こちらこそ、私を好きになってくれて、ありがとう。また明日。おやすみ」 とだけ送信した。何気なく、自分のインスタを開くと、流からいいねが来ていた。流のインスタを開くと、相変わらず、青空の写真が美しかった。私は、流の写真を眺めながら、眠ってしまった。
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