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「相楽教授って、話長いよね・・・話長い人って、嫌われるよね」
「ははは!先輩、はっきり言いますね~」
とゼミの後輩、葵君と会話をしながら、大学構内を歩いていると、向こうから、唯斗が歩いてきて、普通にすれ違った。その日、唯斗は私と口をきかなかった。
家に帰り、ベッドに腰かけると、唯斗のことが気になった。私と話をしないなんて今まで一度もなかった。機嫌が悪くなる日もあるかと思っていたが、すごく気になり、唯斗にラインをした。
「今日、どうかした?」
と送信すると、唯斗から電話がかかってきた。
「もしもし?唯斗?今日、どうかした?」
「あの男、誰?」
唯斗から初めて聞く声だった。どこか冷たく、怒りが滲んだ低い声だった。
「男?誰だろう・・・」
「廊下で一緒に歩いていた男だよ」
「あぁ~、葵君ね。ゼミの後輩だよ。葵君も私も相楽教授に用があったから、一緒に行っただけだよ?」
「俺以外の男に笑顔を見せるな。そして、俺以外の男と一緒にいるな」
そこから、唯斗の束縛が始まった。どこに行くのも、何をしているのもすぐに連絡しないと、怒られる。連絡するのを忘れると、しつこく唯斗から電話が来る。大学内では、どこに行くのも唯斗が着いてきた。唯斗の束縛に、だんだん私は疲れてきてしまった。
そして、癒しを求めるかのように、流のインスタを覗く。そこにはやっぱり美しい空の写真があった。スクロールしながら、流の投稿した写真を見ると、ある写真に目が留まった。流にしては珍しい真っ暗な写真だった。
その写真の投稿文には「Good bye love」と書かれていた。何かあったんだろうか。ふと、流からいいねやコメントが来ていないことに気づいた。
流からいいねやコメントが来ないことなど、今までになかった。いつから来なかったのか気になり、自分のインスタを確認すると、最後のいいねは、唯斗とのデートの前日に投稿した、夕焼け空の写真だった。
唯斗の束縛が日々、激しくなり、心がしんどくなっていた。悩みを誰かに相談したかったが、友達と呼べる人はいない。唯一、悩みを相談できるのが、流だった。
流のラインに今自分が抱えている悩みを打ち明けた。一向に、返信は来ない。電話をしても出てくれない。流とのラインのトーク履歴をスクロールしてみると、そこには他愛もない会話があった。
だんだん、幸せだった日々が思いだされる。一つ一つのやり取りをかみしめていると、涙が出てきた。
「流に会ってみたい。会って話がしたい。唯斗のことも、空のことも・・・色々会って話したい」
そう思うようになった。そして、私は流に
「流、久しぶり。元気?私・・・流に会いたい」
とメッセージを送った。でも、流からの返信は来なかった。
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