インスタのあなたに恋をしました

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*後悔* それから一年後、私たちは大学四年生になった。流からの返信は今もなお来ていないが、私のインスタにはいいねが来るようになった。 それで良かった。ラインの返信が来なくても、流と繋がっていられるだけで良かった。そして私は相変わらず、流のインスタにいいねを送り、癒されていた。 唯斗と付き合って、二年が経とうとしていた。振り返ってみると、この二年間、色んなことがあった。 一度は、唯斗への気持ちが冷めかけてしまったこともあった。でも、唯斗は変わらず私をまっすぐに愛し続けてくれた。そんな唯斗の存在が私にとって、だんだん大切な存在になっていた。 いつものように、流のインスタを見ると、私は目を疑った。 「流のインスタを応援してくれた皆さんへ。流は、不慮の事故に遭い、先日息を引き取りました。このインスタは流にとって生きがいのようになっていました。皆さんには、本当に感謝しています。ありがとうございました。 流の母」 この言葉と共に、流の好きな青空の写真が添えられていた。私は頭が混乱して、状況を理解できないでいた。 すると、スマホが鳴り手に取ると、流からのライン電話だった。ものすごい勢いで出ると、流からではなく、流の母親からだった。 「もしもし?水上さんですか?流の母親です。どうしても、あなたに伝えたいことがあって電話したの。びっくりさせてごめんね」 「あの、さっき流のインスタを見ました。嘘ですよね?何かの間違いですよね?」 信じたくなかった。嘘だと、皆を驚かすための意地悪なサプライズだと思いたかった。 「本当なの。流は昨日、交通事故に遭ったんだ。どうやら打ち所が悪かったみたいで・・・正直、家族の私たちも戸惑っている」 流の母親は少し震えた声で、私に優しく説明してくれた。これは、意地悪なサプライズでも嘘でも、間違いでもないことに少しずつ認識し始めていた。 「水上さん、流は水上さんのことが好きだったみたい。水上さんのインスタの投稿を日々、楽しみにしていたんだよ。水上さんとラインを交換した時もすごい喜んでた。そして、水上さんと空の話をしたりするのが楽しいってよく言っていたよ。今日は何話そうかな~って幸せそうにしていた。ずっと、水上さんに会ってみたいって口癖のように言っていたこともあったな~」 流の母親から話を聞くと、だんだん涙が溢れてきた。私はあの時、流の写真を見た時、流のインスタに恋をしていた。 私の生活に流はどこか心の支えになっていたんだ。ラインの連絡をするようになって、ますます流が大切な存在になっていた。 悲しみや苦しさを流は優しく拭ってくれていた。 「私も、流のことが好きでした。大切な存在でした・・・」 涙声で、そう伝えると、 「ありがとう。流も喜んでいるよ。ある日、水上さんと男性の写真を見て、流は、“失恋した”って言って、落ち込んでいた。自分の気持ちにけじめをつけるために、真っ暗な写真を投稿したんじゃないかな」 あの時の私は、流が私に好意を抱いてくれていることなど、一ミリも気づいていなかった。あの写真で流を傷つけてしまったんだ。 「それからしばらくして、水上さんから会いたいってラインが来たときは、嬉しそうだった。でも、“もし会ったら、本気で好きになりそうで怖い。瑠衣の幸せを邪魔したら、男として失格だよな・・・”って言っていた。でも、やっぱり水上さんに会いたかったみたい。それで、水上さんに会うために、新しい服を一人で買いに行っている時に、事故に遭ったみたい。水上さんが悪いわけじゃないからね」 あの時、お互い会っていたら、何か変わっていただろうか。いや、もっと早く会っていれば。もしかしたら、私の隣に流がいたんじゃないか。二人で幸せになれたんじゃないか。私と出会わなければ、流は今頃幸せに暮らせていたんじゃないか。 そんな思いが頭を駆け巡る。 「水上さん、流と出会ってくれて、ありがとう」 「私は、流との他愛もないやり取りや、流の写真を見る時間がとても幸せでした。流には、感謝しています・・・」 流の母親と電話を切ってから、声をあげて泣いた。 「会いたいよ・・・」
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