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「……なぁ、あれ、大倉先輩の彼氏じゃね?」
水で喉を潤していたら、優斗が突然、そう呟いた。
さっきまで翔と笑い合っていたはずなのに、優斗の目線は体育館の窓の方に向いていた。
「え?だれだれ??」
状況を理解しきれていない翔が、首をキョロキョロと振る。
″大倉先輩″
いつから俺の耳は、その言葉に敏感になってしまったのだろう。
実は、大倉先輩に彼氏がいることは少し前から知っていた。
廊下で先輩と一緒に歩いていたのを偶然、見つけてしまったのだ。
彼氏がいると知った時は、何故か心が落ち着かなくどん底に突き落とされたような気分にまでなったが、先輩の幸せそうな顔を見て、先輩が笑っているならそれでいいやと思えた。
「彼氏が、どうしたんだよ。」
未だに窓の外の体育館裏をじーっと見ている優斗を不思議に思った俺は、そう尋ねた。
彼氏がいたから、なんだよ?
何かあったのかよ?
「静かに。なんか悪口みたいなこと、言ってる。」
「え?」
悪口……?
俺は出来るだけ窓の方に近づいて、聞き耳を立てた。
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