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#27『被選者』
彼女の目は“喰われていた”。ミシェルはそのことを知らなかった。ジルはその目のことをシェイネに以外告げていなかった。
しかしシェイネにも“その目”が一体どんなものなのかは教えていなかった。ジルは“彼”が容認しない限りは教えるつもりも“目”を使うつもりもなかった。
「話のわかる“殺人鬼”で助かるねぇ。」
ジルは帯刀を握りしめ、抜刀し、刀の峰でトントンと肩を叩くと微笑んだ。その笑みに感情はこもってなどいなかった。
その笑みにイルゼ達は見覚えがあった。向けてくる冷たい笑み。戦意や殺意に満ちたその表情。しかし“奴”とは何かが違っていた。
─…正義感、か。─
「ねぇ。ジル。一個だけ聞いていいかな?一個だけ。」
「不意打ちをしないならねぇ。」
「あなたの目、ひょっとして“喰われてる”?痛くない?どんな感じなの?教えて?」
「……一言だけ言わせてもらうと、“何もない”かねぇ。」
少女の僅かに見える口が歪んだ。口角が上がった。笑っていた。
─あぁ、嫌だなぁ。“父さん”の笑顔に少しずつ似ちゃうよ。あーあ。嫌だなぁ。─
「何もない、かぁ。ふーん…。何も無いのに、どうして、“私とは”違うのかなぁ。どうして、“私とイルゼ”とは違うのかなぁ。」
「あぁ…?」
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