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「…ねぇ〜。“そんだけ”?」
ミシェルは立ち尽くしていた。額が痛む。
─きっと…あの女の子の…“悪意”なんだ…。─
ミシェルの中の怒りや苛立ちは知らぬ間に消えていた。状況は何が何だか全てが分からない上に痛み続ける額が苛立ちをかき消したのだろう。体から徐々に力が抜ける。心は荒れていない。わだかまりも、不安も、なにもなかった。
-だからこそ。-
ミシェルは屈んだ。直後に斧の刃が空を切った。後ろを振り返ると今度は真下に斧を振り下ろそうとしていた。後ろに飛び退く。斧が振り下ろされる。
「逃げないでください。」
「絶対にやだ。みんなに“必要とされてるのに”死ぬわけないじゃんっ!バカなの?」
怒りや苛立ちはおさまっても、彼女の中の嗜虐心は収まるどころか肥大化していく。
イルゼを煽るように笑うと顔を彼女に近付ける。
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