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「それでも経験には及ばない。数には及ばない。」
イルゼの手の力が、首を絞める力が強くなる。それを感じ取ったミシェルはクスクス笑った。
「そうだね、そうかもね!言えてるよ。シミュレーションと本番は違うもんね?そうだねそうだね!」
「……は…?何あんた…。コロコロコロコロ意見を変えて…。」
「ねーぇ。天才ってね、努力の塊だって知ってる〜?」
「は…?」
イルゼの手の力が緩む。無意識だった。
「実力者はもちろん、天才も努力家なんだよ?努力もしないで天才になられちゃったら不平等だよね〜?」
「……何が言いたい?錯乱させようとしても無駄。そんなことには…。」
「動じてたじゃん。もしかしてイルゼちゃん強がり?可愛いね〜。」
「やめろ、馴れ馴れしくするな。」
「あのさぁ、人を困らせるだけ困らせて、自分はいい思いするなんて、許されないよね〜?努力なしに天才になったのと同じくらい酷い話だよね〜。あぁ、別にイルゼちゃんが努力してないっていう訳じゃないよ?イルゼちゃんはね、ただただバカな奴に成り下がっちゃったって言いたいの。」
「は………?」
ミシェルは、イルゼの雰囲気が明らかに変わったのに気付き、距離を取る。背後では鈍い音が止めどなく鳴っている。そして吐息。時折苦しそうな声。
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