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裸足のまま庭に出る。
冬の夜の冷たい外気が容赦なく身を刺す中、頭と心臓だけが熱い。
確信にも似た予感がする。
母が、姉が、やったんだ。
庭いじりが趣味だった父が死んでから放置され、雑草ばかりになった庭。土は白く固くなり、その上に枯れた草が倒れて積み重なっている。
ユタはこの庭にいる。きっと、どこかに埋められている。
土を靴底で擦る音がした。動けない私の耳元に、ふっと熱い息がかかる。
「辛いだろうけど、あなたのためなの」
姉の低い声に、全身に鳥肌が立って、そして、
見つけた。
白っぽい庭の隅、不自然に盛り上がった茶色い土。
「ユタ!」
口から出た声は、自分のものだとは信じられないほど高くかすれていた。
ひざまずき、素手で土を掘る。膝に細かい砂利が食い込む。明らかに掘り返されたばかりの、しっとりと湿った土。むせかえるほど濃い香りが私を包む。
やめなさい、と抱きついてきた姉を思いっきり庭の奥へ突き飛ばす。小さな悲鳴が聞こえて、そして聞こえるのは私が土を掘る音だけになった。
ユタ、私の愛しい息子。
ごめんね、今助けてあげる。
土の中はどんなに寒くて暗いだろう。
土の中に取り残されているユタの姿を想像するだけで体が冷たく震えて、歯ががちがちと鳴った。
「……!」
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