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白い腕が見えた。
徐々に胸、腹、そして顔が見えてくる。
ユタは、服を着たまま埋められていた。
「ユタ……」
ユタの白い肌は土に汚れていた。
母に踏まれたのか、なにかに押しつぶされたようにぺしゃんこになったお腹。
黒々とした大きな目は見開かれたまま、左目が取れかけている。
突然、ぐったりと力を失ったユタの体が私の手から消えた。
ゆっくりと、後ろを振り向く。母が、ユタを片手で掴んでいた。
「返して」
「無理よ」
「返して!」
「しっかりして!」
母は青白い顔で、ぶるぶると唇を震わせて叫んだ。
「これはユタじゃない。本当のユタは、1年前に死んだじゃない」
目の前がちかちかと光る。
じっとりと肌にまとわりつく湿気、雨の音、けたたましいクラクションと、扉の向こうに消えていく小さな棺。
いいえ、死んでなんかいない。私の可愛い息子は死んでなんかいない。
母の上に、思いっきり石を振り下ろす。
だらりと垂れた母の手から、私は愛しいユタを取り返し、思い切り抱きしめて、囁く。
ごめんね、私のかわいい息子。
今、生き返らせてあげるから。
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