華麗なる挑戦。カレー

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華麗なる挑戦。カレー

 お店に入った時、誰かが食べていたら。  つられて食べたくなるメニュー、それは「カレー」。  あの誘導率は(なん)なんだ!?  嗅覚を通じ、意識操作を持って「カレーを頼め」と訴えかけてくる、あの感じ。  (しば)し逡巡するものの、気づけばカレーを注文してしまっている自然な流れ。    カレーには、何か特別な魔力があるとしか思えない。  もちろん、抵抗(レジスト)に成功する人も多いだろう。  “カレーが嫌い”という人は、8人にひとりの割合でいるらしい。  意外にもわりといる。  嫌いだと……合宿やキャンプで「とりあえずカレー作ろう」というカレー至上な現代日本において、さぞ大変だろうなぁ、と勝手に推察してみたり。  カレーの“どんな部分が苦手か”というアンケートを読んだ。 ◎ 脂分でお腹を壊す ←カレールーの脂分は多くて、妊婦さんにも良くないね ◎ ごはんと混ざった感じがイヤ ←カレーをかけずに別々に食べるか、ナンで食べるか ◎ 好きで食べ過ぎてイヤになった ←涙。それ、生クリームでも聞く話 ◎ 辛い ←わかる! カレーは辛いのが仕事みたいなもんだけど  なるほど、わかるよ。(おも)に最後のやつ。  カレーって辛いよね。  うちなんか、妹がうんと年下だったので、実家のカレーはいつまでも甘口だった。  つまり私は、大きくなっても甘口を食べていた。  だもんで、世間的な中辛で「これは辛い」と感じる舌に育った。  初めて入るお店でカレーを頼みたくなった時は、“賭け”な気持ちでオーダーしてる。 「ここのカレーは、私に耐えうる辛さか否か?」  うっかり辛いと、ごはんに対し、ルーを余らせてしまう現象が発生するし、辛さと戦いながらの食事は、なんか、どこに集中すればいいのかよくわからん。  美味しさか、辛さか。  水の残量を目測しつつ、補給経路と距離を検討。白米援護はあとどのくらいまで可能か……。もう何やってんだか。  標準・中辛カレーを提供して嘆かれても、お店側にはいい迷惑だろなぁとわかってはいるんだけど……(カラ)いと(ツラ)い。  でも頼んじゃうんだ! しかもワクワクしながら! まさかM……ゴホンっ。  特にカツカレーとか頼んじゃった日には、「贅沢ーっ」って胸躍らせながら、出来上がるのを待ってしまう。  いや、カツは白米に次ぐ強力な助っ人だよ。すぐにカレーが沁みて、敵か味方かわかんなくなるけど。  そんなわけで独特の進化を遂げたジャパニーズ・カレーは、8人中7人に愛され、「カレー辛い」と泣く私にも愛されている。  レトルトだって、ときめく。基本甘口で、せいぜい中辛までしか買わないけど。  本場インドカレーのお店に入ったことだってあるよ!  デートだったから不可抗力で。  相当覚悟してたのに、スープみたいに美味しくて、めっちゃびっくりした。  そのお店の辛さは、テーブルの上にあるミニ壺の香辛料で、自分で好きに調整するスタイルになっていた。  それさえ混ぜなれば、最高に口にあう! とても気に入って何度かリピしたが、今、そのお店はもうない。インドに帰っちゃったのか。  新しくインド・カレー店を開拓する勇気は……まだない。  近くに、スープカレーのお店が開店した。とても気になる。行ってみねばなるまい。  私は常に、この身と舌をかけて、カレーに挑む。  カレーのことが、「推し」で「好き」だから。
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