古代の息遣い。漢字

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古代の息遣い。漢字

(ああっ、すっかり忘れてた――!!)  慌てて検索する。とっくに募集が終わってた。がっくり。 「今年の漢字」  毎年この時期になると、そろそろかなぁって思って、気づくと大抵発表された後だったりする。  応募出来たためしがない。  いいもん、別に。  漢字、特に思い浮かんでなかったし。……しくしく。  ちなみに2021年は「金」と発表されていた。  ()字塔で、()メダルで、給付()だから。  うん、2018年の「災」とかより、字面的にずっと好み。 「金」は2000年・2012年・2016年と選ばれてて今回で4回め。  皆、(きん)好きだなっ!  わかるよ。そこにキラメキがあるよね。 「金」と言う漢字を紐解(ひもと)くと、その字があらわす「金」は今でいう「黄金」ではなく、砂金や鉱物など土の中にあるキラキラしたものを示していたとされる。  それを火をもって製錬したと「金」一文字から読み取れるらしい。諸説あるけど。  はい!  今回の「推し・好き」は「金」!……ではなくて、「漢字の成り立ち」。  ずっと昔、漢字の形について書かれた文庫や、文学者・白川静氏の漢字話を読み、「面白いなぁ」と思ったのがキッカケ。    例えば白川氏によると、「雲」という字は、もともとは「云」で、これは雲から霊獣・竜のシッポが見えてることを表してたんだそうな。  空から竜のしっぽがくるりと曲がってのぞいてるんだって。  か、かわいい! 竜好きの血が騒ぐ。  白川氏がその説を提唱するまでは、別の成り立ちが考えられていたという。  古代の象形文字から変化してきた漢字。  古い話なので、本当の由来がどれかはわかんないけど、どの説も興味深い。先述の「竜のしっぽ」みたいに。  そしてそれを読めば、古代の生活が垣間見える。気がする。 「道」という字は 悪霊が跋扈(ばっこ)する夜道を、魔よけ用に「生()」を持って歩いたことから。(余計に怖いよ。) 「途」は悪霊を祓い清めた道。 「戻る」という字は、戸の下にいる犬が戻ってくる悪霊を追い払う意味。(「戸」の下は最初、「大」の字じゃなくて「犬」の字だったらしい。)  ぱっと見ただけで、悪霊絡みの漢字がすごく多い。  闇が多い古代には、悪霊が(あふ)れてたらしい。  白骨も転がってたっぽいしね。「白」は野ざらしのシャレコウベのカタチからだって。ぎゃあ。(※注)  良かった。現代の世で、夜でも照明器具が明るくて、本当に良かった。  怖がりなので、心からそう思う。     食べることも、生々しい。 「美」という漢字が、神に(そな)える立派な「羊」から来てることは有名だけど、「半」という字は「牛」から来ている。  (かなえ)という(三つ足の寸胴鍋(ずんどうなべ)っぽい)道具で牛を煮る時、大きすぎる牛が(かなえ)に入らないから、二つに切った。 「牛」を割ったから、縦に線引いて「半」分。  圧倒的力技。縦割りかよ! どこのハイレベル冒険者だ。  うんうん、大事だね。牛の調理。羊がおっきくて美味しそうなのも大事なことだ。  ちなみに「牛」の字自体は両に突き出た角のカタチから。正面から見た牛の顔。言われてみたら、確かにそれっぽい。  そんなわけで、漢字の成り立ちを読むのは楽しい。  文字とセットで古(いにしえ)の生活が分かる。そんな漢字が「推し」で「好き」! ********  (※注)補足。  「白」という字の成り立ちは「頭蓋骨」の他に、「親指」のカタチから来て大きいものを指す、または「ドングリ」のカタチで、剥くと白かったから、など。  大きい意味には「伯」、植物であることは「柏」etc. それぞれ派生した文字にも説得力があり……。  正解は不明なのですけど、「ドングリ身近だったんだね」と和んだりするのも、また楽し。
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