復活?!

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「いよいよこれが最後の一つです。本当に良いんですね? 教授」 「うん、良いよ。最後のピースをはめてくれたまえ」  彼らは、地下深くの発掘現場で慎重に作業を続けていた。先ほどまで地上で行っていた発表会見の喧騒がウソのように、ここは静まり返っていた。  発掘された地下空間に広がる荘厳な神殿とそこに佇む女神像は、彼らを神話の世界に連れ去ってしまうような錯覚を与えてくる。  作業内容を記録するために動作しているビデオの機械音と、地下空間に新鮮な空気を送り続ける換気装置のファンの音だけが、彼らが現代世界にいるのを教えてくれるようだった。  カチッ。  助手は教授にうながされるように、手にしていた最後の破片を、その女神像の胸の空洞部分に差し込んだ。差し込まれた破片は、まるで元からそこにあったように女神像の綺麗な膨らみを形成した。  ゴゴゴゴゴ! 「おお、どうしたんだ?」 「教授、地震でしょうか。こんな地下深くで、ここまで大きな揺れを体験したことありませんでしたけど……」    彼らが地下空間の大きな揺れに驚いていると、目の前の女神像が突然淡いピンク色の光を放ち始めた。彼らがその光のあまりの眩しさに手で目を覆って立ち尽くしていると、まるで天から聞こえるような甘美な声が頭の中に直接飛び込んできた。 「わたくしを呼び出したのは、貴女でしょうか?」    頭の中の声を聞いて、教授と助手は、お互いに顔を見合わせて驚いた。眩しい光が落ち着いた場所には、にこやかにほほ笑む美しい女神が佇んでいた。 「き、き、き、教授。これって、ホンモノですよね?」 「うん、そのようだね。僕も発掘経験は長いけど初めて見たよ」  助手は、震える指で女神を指しながら口ずさむ。教授は口元に手を当てて、落ち着いた様子で女神を見つめるばかりだった。 「わたくしを呼びだして、叶えたい願い事はなんでしょうか? わたくしを復活させた貴女の望み、一つだけならば叶えて差し上げますが……」  女神は、着ているキトーンを優雅に揺らめかせながら彼らに近づいて来る。彼らはお互いに顔を見合わせて困惑してしまった。教授は助手に、君が復活させたのだから、君の願いごとを言いなさい、と目で語り掛けた。  そこで彼女は戸惑いながら女神に向かって声をかけた。 「そ、そ、それでは。私を幸せにして下さい!」  女神は彼女の目をじっと見つめた後で、優しそうな声で返事をした。 「わかりました。あなたの幸せを阻んできた過去の原因を取り去ってあげましょう。そうすれば、あなたは幸せな道を歩めるはずですものね」  女神は彼女にさらに近づいて、彼女の手を取って自分の胸に当てながら呟きだしました。 「──幼稚園時代にあなたの隣に座っていたケンジ君。いつもあなたをからかっていましたね。それから、小学校のクラスメートのユージ君。彼は貴女の持ち物を隠したり、貴女をあだ名で呼び捨てにしてました。さらに、中学生の時にはクラブ活動で一緒だったタツミ君に特訓だと称してしごかれた。女子高生の時には苦労して作ったチョコレートを下校時の駅で渡そうとして失敗したアキラ君。大学でも、発掘サークルで同じ女性に先をこされたタダシ君。それから……」 「もうやめてください! そんな過去のイヤなことを思い出させないでください」
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