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切らないでください!
今日はとうとう、ぎんなんの木が切られる日です。
マサルは朝早く、誰にも言わずにこっそり家を抜け出して、ぎんなんの木に向かいました。そしてぎんなんの木の前にどっかりと座り込んでいました。
やがて、作業の人達がぎんなんの木に向かって歩いてきました。
マサルは立ち上がると、ぎんなんの木を背にして両手を広げ
「切らないでください! 切らないでください!」
と、作業の人に大きな声で何度も叫びました。
するとどこからか、いつもぎんなんの木のそばで遊んでいた仲間が集まってきて、マサルと同じようにぎんなんの木を背にして両手を広げ
「切らないでください! 切らないでください!」
と叫びました。
作業の人達は困ってしまい、どうしたものかと顔を見合わせていましたが、その中の一人がマサルの前に進み出て寂しそうに言いました。
「ごめんな。ごめんな。おじさんもね、子供の頃、ここでよく遊んだんだよ。ぎんなんをたくさん拾ったんだよ。でもね、おじさんたちはどうしても切らなければならないんだ。ごめんな。ごめんな」
おじさんにそう言われている間に、子供たちの親がそれぞれの子供を抱きかかえて、立ち入り禁止のロープの外まで強引に連れ出してしまいました。
ぎんなんの木に、大きな機械の刃が入っていきます。
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