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微笑んだ木
マサルの友達、下級生、上級生、そして今までにぎんなんの木で遊んで育った大人たちも、立ち入り禁止のロープの外側で、ぎんなんの木が切られていくのを黙って見ているしかありませんでした。
少しずつ根元を削られていくぎんなんの木を見ながら、マサルは泣いてしまいました。
すると
――泣かないで――
どこからか声がしました。
――私がいなくなっても、私の思い出は残るでしょう。
だから、どうか泣かないで――
その声は続けて
――それに、私がいなくなることで町はもっと便利になる。
だから泣かないで――
「ぎんなんの木なの?」
マサルはぎんなんの木にそっと話しかけましたが、その声はマサルの問いには答えず
――ありがとう。
今までたくさんたくさんぎんなんを拾ってくれて。
私のそばで遊んでくれて。
本当にありがとう。
私はとても幸せでした――
ぎんなんの木がゆっくりと倒れるその時、マサルは、ぎんなんの木がやさしく微笑んだ気がしました。
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