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だが、あと少しで、あともう少しで、何かがつかめる気がする。
私は眼鏡をかけて、ゆっくりと立ち上がった。どうやら雨も頭痛も、やみそうにない。私はずいぶん年老いた。長い年月、自分の体をいたわることもなく、ひたすら研究だけに打ち込んできた。
左目の視野は半分ほど失われてしまった。右目の視野は広いが、光が少ないと黒い幕がかかったように物が見えなくなってしまう。両眼とも、もうじき研究に耐えられなくなるであろう。
この背中に広がり続ける痛みは、やがて全身を覆い、私を食い尽くすであろう。だが、自分の延命治療のために、この研究を途絶する気は毛頭ない。
あと少し。あともう少しだけ時間があれば、父と同じ症状に対する、有効な治療方法が見つかりそうなのだ。ゆえに私は時間がある限り、この命がある限り、探し続ける。絶対に見つけてみせる。
お父さん、ぼくは大きくなったら、きっとお父さんを治してあげる。お母さん、ぼくがお医者さんになるまで待っていて。あの少年の日、私は父と母に、そう約束したのだから。
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