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だからお父さんは、ぼくの声とお母さんの声を区別することだってできる。
ぼくの声は丸っこくて、そそっかしくて、あちこちにぶつかって弾むから、すぐにわかるそうだ。
お母さんの声はおだやかで、ゆっくりと伝わり、お父さんにたどり着くと、お父さんをあたたかい波のように包み込んでしまうから、絶対にほかの音と間違えることはないそうだ。
お父さんはお母さんと出会う前は、音を感じることはできなかった。何も感じることができなかった。心をただ冷たく閉じていたんだ。
けれど、お母さんのあたたかい心が、お父さんの心を開いてくれた。お父さんはどうしても、お母さんの声をわかりたいと思った。なんとかして、愛する人の声を感じ取りたいと願った。
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