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最初は何も感じなかった。けれどお父さんはあきらめなかった。絶対にできるはずだ。絶対にやりとげるのだ。心に誓った。強く強く願った。
毎日毎日、何時間も何時間も、お父さんは歯を食いしばって、でも心だけは静かに保って、周囲の空気を震わせる波の動きを探し続けた。
するとやがて、お父さんは何か感じるような気がしてきた。それはまるで、さざなみが周囲の空気をかすかに震わせるような気配だった。
それからしばらくすると、早朝の光の中に、空気の小さな振動を感じ取れるようになった。それは、すずめの声だった。
それからは、どんどん感じとれるようになった。公園で遊ぶ子どもたちの歓声、車のクラクション、商店街から流れる音楽、テレビの音声、窓をたたく雨音、蛇口から出る水の音、お母さんの足音、そして、お母さんの声!
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