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曉子の夫となった雅史は最低の男だった。私が曉子の親なら絶対に嫁がせないであろう。女にだらしなく仕事もできない。大企業の創業家一族の人間でなければとうに身を持ち崩していたに違いない。それでも曉子は文句ひとつ言わず婿養子として雅史を受け入れた。彼女が不妊だったのは不幸なことだが一方でいつか自由になるチャンスを持ち続けているともいえる。そうだ、曉子と二人で革製品を売る小さなお店でもできたらいい。私はそんなことを夢想する。曉子にその話をすると目を輝かせた。
「さとちゃん、それは素敵だわ。ええ、とても素敵」
それにはまず準備をしなければならない。私は曉子の腕を磨くべく指導をし二人で作品を作り続けた。曉子は言う。
「今年も夫にプレゼントをしようと思うの」
「お誕生日プレゼント、ですね」
毎年曉子は夫に革製品を手作りして渡していた。夫の雅史も一点物の革製品ということでこれだけは喜んでいたようだ。
「じゃあ準備しなくちゃ、ですね。お嬢様」
私たちはまるで女学生のように二人でクスクスと忍び笑いをした。
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