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曉子はとても人見知りで私にもなかなか心を開いてはくれなかった。だがあることをきっかけに急速に心を開くようになる。
「お嬢様、実家にあるミシンをお持ちしました。お嬢様は手先が器用でいらっしゃるからレザークラフトなどおやりになってはどうかと思って」
「レザークラフト?」
ぼんやりと繰り返す曉子に私はミシンを使ってみせた。
「ほら、こんな感じで鞄やらお財布やらも作れるんですよ。……お嬢様?」
曉子はほんの少し口を開きキラキラと瞳を輝かせて私を見ている。こんな曉子は初めてだ。
「すごいわ、うん、すごい」
そう言って笑う彼女はとても愛らしい。私は胸を衝かれる思いで彼女を見上げた。ああ、こんな笑い方もできるんだ、と。何だか泣き出しそうな気持になる。それからというもの曉子はどんどんレザークラフトの世界にへとはまり込んでいった。
「私ね、革の匂いって好きなの。いいわね、さとちゃんの実家は革製品の縫製をしているんでしょ?」
いつしか曉子は私のことをさとちゃんと呼んで慕うようになっていた。
「ええ、祖父が革にはひどくこだわりがあって皮をなめす作業場もあるの。お嬢様も欲しい革があったら言ってくださいね。特別に加工させますから」
「まぁ、約束よ!」
私たちはしっかりと指切りをする。二人だけの秘密の約束。
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