98点の男

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振り向くと一位の春田がいた。 「あと一問だったんだね、危なかったよ。 ちなみにどこを間違えたんだい?」 なんだこいつ。 初めて喋るけど意外と馴れ馴れしいな。 「記号問題。 結構序盤の。」 「あー、記号か。 半分運みたいなものだから君もほぼ100点ってことか。 長い学生生活。ライバルがいないと張り合いがないからね。 僕は吉川さんがそうなるかなと思っていたんだけど、伏兵がいたようだ。 国林くん、僕と今回の中間テストの総合点で勝負しようよ。 今僕が君に勝っているのは運かもしれないけど、運も実力の内っていうだろ?勉強というのはいかにその運を… 「おう」 話が長くなりそうだったので、俺は威勢よく返事だけしてそそくさと席に戻った。 ただ実際、春田には勝たないといけない気がしていた。 うちの親は勉強に異様に厳しい。 昔から100点をとっても「あ、そう」くらいのもので90点以下をとろうものなら何を言われるかわかったものじゃない。 今回の現代文等の自身のあった教科は「たぶん100点とれた」ってテスト当日言っちゃったんだよな。 98点でビクビクしながら家帰らないといけないってどういう親だよ。 だからこそ別の教科でもいいから100点とっておきたいところではある。 春田の鼻も折っておきたいし。 今日の残りの教科は、化学、英語B、古文、日本史か。 英語Bと古文は100点の可能性があるし日本史はかなり自信がある。 化学は自信ないわけじゃないけど100点はない。  中学では、ほぼ全教科100点で誰にも負けなかった勉強。 だがやはり進学校では脅かす存在がいる。 100点でないことが確実な教科もある。 俺は勉強で初めてのドキドキ感を得ていた。
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