98点の男

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家の前まで帰ってくると、見慣れたはずの家 が知らない館のように大きく見えた。 玄関を開けるとすぐに母親が出てきた。 「ただいま」 あえていつもより少し無骨に言う。 ややこしいことになりかねないから、答案の書き換え疑惑の件は言わないでおこう。 PTAとかに言われて大事になったらら恥をかくのは俺だ。 「おかえり。 で、どうだった? 今日は現代文や日本史も返ってきたんでしょ? 他にも100点は取れた?」 まだ鞄も脱いでいないときから、せわしない母親だ。 「日本史98点だった」 「え!? なんでよ!あんた100点とれたって言ってたじゃない! どこを間違えたのよ!」 「ケアレスミス」 消えそうな声でそう答え俺は部屋に向かった。 「ちょっとケアレスミスって何よ! 見直しは絶対しなさいって教えてたでしょ! それで他の教科はどうだったの!? まさか100点どれもとれてないってことはないわよね…」 扉を閉めると、声は聞こえなくなった。 こんなにも勉強熱心な母親が鬱陶しいと思ったことはない。 普通高校になったらもう少し子供の自主性を尊重しそうだがこの人は違う。 小学校の時の教育ママのままここまできているのだ。 鞄を放り出し、ベッドに仰向けになり天井を見る。 今日あった出来事を思い出し整理する。 俺の答案が書き換えられた色々な可能性を考えてみる。 あり得ないことを消去していくと、一つ可能性がありそうなことが頭に残った。 普段晩御飯の時間までは一応勉強をするが、今日はする気にならなかった。 仕方なくスマホを見ているが、思い立って台所に降りていく。
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