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「あと一問で100点だったのに」
現代文のテストの結果を見て、悔しさのあまり心でそう呟いた。
もしかしたら声に出ていたかもしれない。
結果は98点。
記号問題を間違えた。
難しい記述問題は全問正解だったのに、記号問題を間違えるとはついてない。
耳を澄ますと、近くの席の青野や川崎は点数低い自慢。
自分の心情を顔に出さないように気をつけながら唯一間違った問題を見てみる。
あぁ、確かにここは正解の回答と二択で迷った気がする。
やはりついていない。
先生の話では100点の生徒も一人いるらしい。
一番後ろの席から見ていると、どう考えても自慢げな仕草をしている生徒を一人見つけた。
吉川明日香だ。
誰か私に気づいてよとばかりに嬉しそうな顔でキョロキョロ周りを見渡している。
返ってきたテストの点数の部分を筆箱で隠したり、折ったりしている生徒が多い中、彼女はむしろ見てくれと言わんばかりに教室のど真ん中の席でテスト用紙をむき出しにしている。
「このクラス唯一の100点は春田くんです」
担任の冴島先生が高らかに言った。
吉川ではなかった。
ややこしい仕草しやがって。
「50点以下の生徒も何人かいました。
現代文は勉強しなくても、ある程度解けるとか漢字だけやるとか言ってる生徒の声をたまに聞きますが大きな間違いです。
高得点の生徒は必ず勉強しています。
このクラスの現代文トップ10のリストを前に貼り出しておくので、今回50点にも届かなかった人は必ず上位の生徒に勉強法を聞いておきなさい」
おっ。
俺の98点も貼り出されるのか。
しかし冴島先生、担任だからってやりたい放題だな。
まぁ、俺は全然構わないけど。
興味ないけど見とくかという顔をして、さりげなく2限後の休み時間にそれを見に行った。
おそらく先に結果を見ていた吉川が俺のことをライバル視しているように睨んできたが無視した。
俺の98点は単独二位だった。
吉川は96点。
せっかく高得点だったのに銅メダルだった彼女の苦悶を想像してしまい少しニヤける。
「ふふふ、残念だったね。
国林くん。」
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