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「いやあ、なかなか雰囲気あるじゃん」
「うん。わざわざ歩いて来てよかったね」
普通の人ならここで恐怖を感じて、やっぱ引き返そう…とかなるところなんでしょうが、なにしろ心霊スポットマニアですからね。俄然、テンションの上がった二人はさっそく入ってみようってことになりました。
懐中電灯を忙しなく動かし、小さな点のような光で周囲を照らしながら、A君達はゆっくりトンネル内を進んで行きます……。
昭和の初め頃に作られたらしいんですが、手掘りなんですかね?今のトンネルと違って天井も壁もデコボコしていて、そこに補強のためにモルタルが吹き付けてあるんですね。
でも、その暗い灰色をしたモルタルも所々ヒビ割れていて、天井からはぴちゃん……ぴちゃん……と、もの寂しい音を響かせながら、一定のテンポで水滴が垂れてるんです。
その水滴のせいか足元の地面も、辛うじてアスファルト舗装ながら、あちこち水溜りができてジメジメしている……。
それでも心許ない懐中電灯一つで進んで行くA君達でしたが、いくら進んでも出口が見えないんです。まるでこの暗闇が永遠に続いているかのようなんですね。
そんな想像に捉われた瞬間、B子さん、なんだか急に怖くなってきたっていうんですね。
別に霊感とかあるタイプじゃなかったんですが、ああ、これ以上先に行っちゃいけない……本能的に、そう思ったんだそうです。
「ねえ、もう充分見たからそろそろ帰ろうよ?」
そこで、そう、B子さんはA君を促したんですが。
「ええ? せっかく来たんだし、もうちょっと行ってみようぜ」
そう言ってA君は足を止めようとしないんですね。
なので仕方なく、もうしばらく経ってから……
「ねえ、もういいでしょう? いい加減、帰ろう?」
と再びA君に言ってみたんですが。
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