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もう少しだけ、ちょい右
「もう少しだけ、ちょい右。」
と言われ、俺は自身の感覚で右へと操作制御をする。
夏の定番、スイカ割り時の掛け声支援。
「もう少しだけ、ちょい右。」
車のバック駐車、バック時の後方確認支援。
「もう少しだけ、ちょい右。」
集合写真、撮影時のベスポジ調整支援。
「もう少しだけ、ちょい右。」
美術造形物、設置時のセンス光る拘り支援。
「もう少しだけ、ちょい右。」
『あぁ、もぉ分かんねーよ!』
ちょい右?やや左? もう少し?
何それ。
誰が決めた尺度なのか、人それぞれ感覚はズレている。
俺は指示通りに正確に動くロボットではない。決して意思疎通せぬ 決して縮まぬ 俺とあなたの相互距離。
インプットしたいわく付きの情報に対して、正確にアウトプットできない思考感覚のズレによるジレンマがそこにある。
「あぁ、もう5cm右だったら、当たってたのに。」
5cmだと? ミスった後から推測するに、俺には、10cmぐらい離れてるように見えるがな。
「ほらぁ、もう少しハンドル右に切れば良かったのに。もう1回前出て、切り返して。」
俺のハンドルさばきの技術回路を鈍らせるような誘導をしたのはあなたなんだが。
「違う違う、行き過ぎ!それじゃ顔隠れちゃうから。あぁ、ちょっと中腰いってみる?」
あなたが見るフレーム世界と俺が並ぶ被写体世界。これはもおパラレル世界の複数フィルムに他ならない。二段階注文は、妥協してもらっていいですか?
「そうじゃないんだよー。分からない?もう少しだけ、斜めに。…いやー違うんだよなぁ。」
美的感覚の鋭さに敬意を表します。しかしながら、俺にはその繊細さの表現をお手伝いすることはできかねます。どうぞ、攻守一体バランスのとれた一人体制を推奨します。
いい加減に
抽象的過ぎる言葉のズレを直したらいかがだろうか?イライラ感も伝わり、こちらも不愉快なのだが。
はっ… いや、違う。
もう少しだけ、俺が穏やかで広い心を持ち合わせるべきなんだな。
完
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