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◆◇◆◇
日曜日、多くの人で賑わっている歩行者天国が交わる交差点の中央に二人の若い男性が立っている。
「よし、じゃあ行くぞ。しっかりとカメラ回せよ」
派手なスカジャンを着た越智尚人が、隣でカメラを構えている祝 俊一と自転車に跨っている中野雅也に声を掛けたのと同時に彼のスマホがけたたましく鳴り響いた。
「全く、タイミング悪いな。もしもし、あっ、なんだ、ばあちゃん。えっ、団子? いらないよ。今忙しいから切るよ」
「なに、尚人のおばあちゃん?」
「そう。二週間前からお袋方のばあちゃんが同居してるんだよ。なぜか毎日近所の古い神社に掃除しに行っててさ、その帰りに団子買ったからだってさ」
「信心深くて優しいおばあちゃんじゃん」
「まあな。でも、人に迷惑かけるようなことを止めろってうるさくて。視聴者は楽しんでいるし、俺らはこれで金儲けして有名になろうとしてんのにな」
「まあ確かに尚人のは行きすぎてる感あるけれどな。今日だって、この歩行者天国で通り魔出たとか適当なこと言って、大騒ぎして集団徒競走とかやらせるんだろ」
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